相続株式の売渡し請求

会社法では、自己株式取得の一環として「相続人等に対する売渡しの請求」(会社法第174条~第177条)が新たに設けられています。その内容と手続きは以下のとおりです。

(趣旨)

いままでの商法では相続人から自社株式を回収するためには、相続人と交渉し譲受けるしか方法がありませんでした。創業者や自社株式を保有している役員や従業員が亡くなった時は、自社株式は、経営に無関係の相続人や、会社の好まぬ者に承継されてしまう場合がありました。
そこで会社法では会社が相続人に対し自社株式を強制的に売渡し請求することを可能としました。

(条件)

1. 当該株式が譲渡制限株式であること。
2. 定款に「相続人等に対し売渡し請求することができる」旨が定められていること。

(方法)

1. 株主総会(臨時総会でも可)の特別決議により次の事項を定めます。この場合、相続人の株式には議決権がなく、且つ定足数にも算入されません。
    (1)売渡し請求する株式数 (2)売渡し請求先の相続人の氏名
2. 売渡し請求を実行します。(売渡し請求できるのは、相続があったことを知った日から1年以内に限ります)
3. 売買価格について、会社と相続人で協議します。(買取価額の上限は「分配可能額(旧配当可能利益)」です。それを超える額は業務執行者が負担します。)
4. 3の協議が不成立の場合は、会社又は相続人は売渡し請求の日から20日以内に裁判所へ売買価格決定の申立てをします。(20日以内に裁判所へ申立てがない場合は売渡し請求は無効となります)
5. 売買が実行され、会社は相続人から自社株式を取得します。

本制度では、オーナー以外に一定の株式を所有する共同経営者等がいる企業では、オーナーの相続のときに共同経営者側から売渡し請求権が行使され、オーナー一族が締め出される可能性もあり注意が必要です。